君に似ている、そんな確信
物陰からふらりと姿を表した黒猫。
首輪は無いから野良だろうが、大柄な身体つきで、どこかふてぶてしくも感じる。静かに座って此方を窺う姿に、誠人はふっと小さく笑った。
「お前とは初めて会ったけど……貫禄あるよな、そうしてると」
かさ、と落ち葉を踏みしめるような乾いた音がたつ。ゆっくりと近づいてかがみ込めば、大きな手を差し出した。すると興味深そうに鼻先が伸びてきて、その匂いを嗅ぐ。
数秒で気が済んたのだろうか、黒猫は元の位置に戻ってく。その様子を見つめていた誠人は、続けて猫に話しかけた。撫で、撫で、と黒い毛並みを撫でて。
「おお、柔らかいな。お前」
「にゃあ」
「そうしてると玲子みたいだな。いつの間にか傍に居てさ」
ついさっきまで心地良さそうにしていた猫だったが、何かを感じ取ったのか尻尾をたてて遠くへ姿を消した。その変わり身の早さに、誠人はやれやれと肩を竦めて「そういうところなんだよな」と可笑しそうにもらした。
胸ポケットにしまった、白い封筒を引っ張りだす。退店まぎわに渡されたそれを開けると、文字を追うことなく再びしまいこんだ。その流れでスマホを取ると、目当ての連絡タブを開く。
――猫と話してたら玲子と話したくなった。今日、会えるか?
そのまま、簡潔な文章をつづる。
――私と猫を一緒にしないで
返ってきたのはいつものツンと澄ました言葉。
そのあとに。
――このあとでよければ、ノワールで待ってるわ
通知の音に、青年は思わず表情をゆるめる。
静かに立ち上がると、約束の喫茶店へと足を向けた。封筒の中身については、彼女と一緒に考えることにしよう。たぶん、それが正解な気がするから。
2025.02.11