今日はとても都合がいい
天気予報では週末、土曜日曜と雪の気配。
冷えきって静まりかえった曇天に、厚ぼったい雲がわいてきた。今にも雨を降らしそうな色をしているが、この気温の低さなら途中で雪にかわりそうな気がする。
そんなことをぼんやりと考えながら、誠人はベッドから半身を起こして吸い慣れないセブンスターを吸う。慣れた様子でジッポを点け、ゆっくりと煙を味わうが、やはり微妙に風味が違うものだ。
「誠人」
「どしたの、玲子」
「火種おとしたらどうするのよ、もう」
「大丈夫だよ。心配性だな、玲ちゃんは」
節くれだった指でトントンと静かに灰を落とす。そのまま揉み消すと、誠人は布団にもぐりなおした。隣りで丸くなっている玲子を抱き寄せ、すりすりと大きな体躯を寄せる。
もこもことした柔らかなパーカーに五指を忍ばせ、優しく暖かな素肌に触れる。男女の差は明らかで、ふにっと沈みこんでく指先。こんなふうに無言でも甘えられる日は、男にとって実に好都合な日だった。
「見て、誠人。雪だわ……」
「珍し……東京で降るの、何年ぶりだろ」
彼女の声が子供みたくはしゃぐ。しんしんと冷えてきたと思ったら、本当に雪にかわったではないか。どおりで街が静かなはずだ。
白い花がひらひらと舞っている。東京で降るのは珍しく、確かここ十年ぶりくらいだろうか。無音の街に広がる幻想めいた光景を、ふたりは身を寄せあいながら眺めていた。
2025.02.08