守るのは俺でいたい
セブンスターのソフトケース。
この銘柄に限らず、紙で作られたソフトケースにはちょっとした使い道がある。
煙草を吸い終えた久保田は、執行部の部室の窓を開け放つ。いつもなら潰してゴミ箱行きだった箱は、彼のちょっとした気まぐれでフィルムから取り出される。
ロゴの入った紙袋は折り紙の要領で綺麗に折って畳まれる。見事に正方形に畳むと、久保田はぎこちない手つきでフィルムに戻して、余計なところを折り、ライターの火であぶって形を整えた。
「ま、こんなもんデショ。あ、おかえり。見まわりご苦労様」
「おかえり、じゃねーよ! 何サボってんだよ久保ちゃん」
「でも珍しいね? 今日は窓が開いてる、誠人が開けたの」
「そ。はい、察しのいいキミにはコレあげるから持ってなさいよ」
「…………え、うん。持ってればいいの?」
「なに、さっそく使いたいの?」
くあ、と知伸交じりの久保田に茶化された彼女は中身を察したらしく真っ赤になって目線をそらした。
四角いソフトケースの中にはコンドームが一つ。予想は当たりだ。
久保田としても護身としておきたいのだろう。
独占。嫉妬。マーキング。
自分が吸ってる煙草の銘柄で渡してくるあたり、何らかの意図も感じる。
「ホント、キミって察しがイイよね」
「誠人がたまに分かりやすいだけだよ」