エゴイストに酔う




「なーに、それ」
「男性向けの香水」
「そんなのどうするの……わっ! さすがにソレはキツイってば」

 わたしはシャネルの箱から香水の瓶を取り出すと、問答無用で誠人にぶちまけた。とは言ってもぷしゅりとワンプッシュ程度なのだが、嗅ぎなれない匂いに彼は顔を顰めた。
 染みついたセブンスターの匂いを消すには至らないが、それだけでも充分に刺激を含んだ甘やかな香りが漂う。わたしは鼻を鳴らして、大きな身体にくっついていたが、しばらく経って小さな欠伸をひとつ。

「へぇ……なるほど。そういうコト、ね」
「え、なに……? ちょ、誠人……」

 抱きかかえられ、寝室へと連行されてく。
 二人ぶんの重みでベッドが軋んで、唇が触れ合うまで、あと三秒――。

「その香水、コドモは眠くなるって知ってた?」
「知らない」
「ウソ。知ってたクセに」