いえす!らぶりー♡
見慣れないパスケースを拾った桂木は、申し訳なく思いながらも確認のために中身を開いた。
中には荒磯までの定期券と、一枚の写真が入っている。見えたのは足元で、身体つきや顔立ちまでは確認できなかった。
「桂木ちゃんたら、えっち」
「きゃあ! く、久保田くん! これは、その」
「分かってるって、確認のためでしょ? これは俺が返しておくから、先に部室に帰ってなさいよ」
「……あ、うん。ありがと、久保田くん。落とし主探すの、お願いね」
桂木が部室へ戻ったのを確認すると、パスケースを閉じた久保田は内心で深く安堵の息を吐いた。
あの時のことはあまり、いや、正直に言うなら抹消したいレベルである。
「嬉しいやら悲しいやら、フクザツだぁね」
中に入っているのは昨年の文化祭の様子を写したものだ。催されていた文化祭の様子を、ただ普通に写したものなら別に構わない。だが、久保田にとって問題なのはその被写体で――そこには見るも無惨な自分の姿が収められているのだ。
ミニサイズ丈のスカートを揺らし、着丈が間に合わずに割れた腹部をチラリズムしている忌まわしい姿。とてもじゃないが見るに堪えない。そんなゲテモノ写真を欲しがる酔狂な女と言うのも、男が唯一手元に置いておきたいと思える不思議な存在であった。